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1718 イタリア 薔薇金貨 MS-64

¥5,500,000

説明

詳細●この一枚の金貨には、イタリア・ルネサンスの偉大な後援者として知られるフィレンツェの名門・メディチ家の気品と栄光が凝縮されています。1718年、トスカーナ大公国リヴォルノの造幣所で鋳造された本品は、当時の大公コジモ3世・デ・メディチの統治下で発行されたもの。NGC鑑定MS-64という極めて高い保存状態を誇る、世界的にも稀少なグレードの個体です。

●表面には、6つの丸薬(palle)を戴くメディチ家の紋章が精緻に刻まれており、これは彼らがもともと薬商として起業し、「Medici=医学・薬草師」として名を馳せた歴史を象徴するものです。この丸薬が王冠のマントに包まれる姿は、薬売りからヨーロッパ屈指の名家へと上り詰めたメディチ家の輝かしい軌跡を物語っています。

裏面には、力強く幹を伸ばし、豊かに薔薇の花を咲かせる一本の樹木が描かれています。薔薇は中世以降、「恩寵」「純潔」「美徳」の象徴とされ、特に聖母マリアの象徴花としても知られていました。その花を豊かに実らせたこの木は、支配者の正義と慈愛、文化の繁栄を表していると解釈できます。

●そしてその周囲を囲む銘文**”GRATIA OBVIA ULTIO QUAESITA”(探し求めた報いは、恩寵として迎えられる)**は、単なる復讐や報復ではなく、正義が恩寵によってもたらされるという深い宗教的・政治的メッセージを含んでいます。これは、暴力的な裁きではなく、「神の意志にかなう報い=ultio」が、徳ある支配者のもとに花開くことを意味していると考えられます。薔薇の木とこの銘文の組み合わせは、美と正義、文化と信仰の融合という、メディチ家が象徴するルネサンス思想の結晶といえるでしょう。

●メディチ家の政治的終焉が迫る中、なおも文化への投資を惜しまなかったその姿勢は、この金貨にも確かに刻まれています。
単なる通貨ではなく、歴史と精神、芸術と思想を併せ持った“語る金貨”──それが、この1718年イタリア・ドッピアなのです。

イタリア
年号1718
鑑定内容1718 ITALY DOPPIA (2Ducat) LIVORNO MS-64
管理番号002-0286